祖父のリコーオートハーフは孫が使う。


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2020年の夏に祖父が亡くなり、葬儀のために新潟へ行った。
お盆の時期だったけど、新幹線はガラガラだった。

葬儀が終わって祖父の家に戻り一息ついていた頃、わたしの荷物の中にフィルムカメラがあるのを見た叔父が「親父もカメラ持ってたんだよ」と何台か出してきた。

その中にあったのが初代リコーオートハーフ。

祖父がカメラを持っていたなんて全く知らなかった。
使わなければ処分してしまうというので、譲ってもらった。

使わなくなってからはずっと閉まっていたようで劣化がひどく、すぐに使える状態ではなかったので修理に出すことに。
それから2ヶ月、この度きれいになって帰ってきた。
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初代リコーオートハーフが発売されたのは1962年。
片手におさまるコンパクトでかわいらしいハーフカメラ。
このカメラが発売から60年近く時が経った今なお使えることにじんわり感動しています。

例えば今持ってるデジカメが60年後に使えるのかというと、バッテリーや充電器が使えるか分からないし、交換しようにもモノがないかもしれない。
今よりもっと鮮明な画像が当たり前になって、見るに耐えないかもしれないし、ボディが大きすぎて不便だと思ってしまうかもしれない。

そう考えると、祖父が持っていたカメラを孫のわたしが再び使うなんてロマンがある。
叔父が私のカメラを見なかったら処分していたのかもと思うと不思議なものです。

歌が好きでカラオケの機械があったこと、社交ダンスを習っていたこと、車を運転するときは白い手袋をしていたこと、私のことがわからなくなっても深刻にならずに「わからね」って笑っていたのがかわいかったこと(わたしもそっかそっかと笑っていられた)。

祖父はマイペースな人で一人で過ごすことも多かったし、私は祖父母にすら人見知りするような子だったので、たくさんおしゃべりをした記憶はない。カメラの話なんてもちろんしたことなかった。
それでもこのカメラを見ていると、眠っていた祖父の記憶が思い出される。

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